2026年11月04日

「大腸がんは高齢者の病気」と思っていませんか?
たしかに大腸がんは年齢とともに増える病気で、日本でも40歳代から罹患率が上昇していきます。
一方、近年世界的に注目されているのが、50歳未満で発症する「若年発症大腸がん」です。
海外を中心に若い世代で大腸がんが増加していることが報告され、日本でも決して「若いから関係ない」とはいえない病気になっています。
ただし、20代や30代で大腸がんになる確率は、60代や70代よりはるかに低いのも事実です。
大切なのは、必要以上に怖がることではなく、
「若いから大丈夫」と症状を放置しないこと
です。
今回は、20〜40代の方に特に知っていただきたい症状と、大腸カメラを考えた方がよいサインについて解説します。
若い人の大腸がんは本当に増えている?
50歳未満で診断される大腸がんは「若年発症大腸がん(early-onset colorectal cancer)」と呼ばれます。
近年、世界各地で若年発症大腸がんの増加が報告されています。
なぜ増えているのかは、まだ完全には分かっていません。
肥満、運動不足、糖尿病などの代謝異常、加工肉を多く含む食生活、食物繊維の不足、飲酒、喫煙、腸内細菌叢の変化など、さまざまな要因が研究されています。
また、若くして大腸がんになると「遺伝が原因では?」と心配されることがあります。
リンチ症候群などの遺伝性疾患が関係する場合もありますが、若年大腸がんのすべてが遺伝性というわけではありません。
一方、親や兄弟姉妹など近い血縁者に大腸がんの方がいる場合には、年齢にかかわらず注意が必要です。
注意したい症状① 血便
若い方で特に見逃したくない症状が血便です。
若年発症大腸がんについて調べた大規模な研究では、診断時の代表的な症状として血便や腹痛、便通の変化などが報告されています。
もちろん、20〜40代の血便で実際に多いのは痔などの良性疾患です。
しかし、
「鮮やかな赤い血だから痔だろう」
「まだ若いから大腸がんではないだろう」
と自己判断することはおすすめできません。
特に、
・血便を繰り返す
・便の表面だけでなく便に血が混じる
・以前にはなかった出血が続く
・便秘や下痢など便通の変化もある
といった場合には、一度消化器内科へ相談してください。
注意したい症状② 便秘・下痢など「便通が変わった」
大切なのは単に便秘があるかどうかではなく、以前の自分と比べて変わったかです。
例えば、
「これまで毎日出ていたのに急に便秘になった」
「便秘と下痢を繰り返すようになった」
「急に排便回数が変わった」
といった変化です。
もともと便秘症の方が以前と同じ程度の便秘をしているだけで、大腸がんを強く疑うわけではありません。
しかし、理由のはっきりしない便通の変化が数週間続く場合には、腸の状態を一度確認してもよいでしょう。
注意したい症状③ 便が細くなった
「最近便が細いのですが、大腸がんでしょうか?」
消化器内科でよく聞かれる質問です。
大腸に腫瘍ができて内腔が狭くなると、便が細くなることがあります。特に直腸やS状結腸など肛門に近い部分の病変でみられることがあります。
ただし、便が細い=大腸がん ではありません。
便の硬さや量、腸の動き、便秘、過敏性腸症候群などでも太さは変わります。
一度細い便が出ただけなら、それほど心配する必要はありません。
一方、
「以前は普通だったのに、ずっと細い便が続く」
「残便感がある」
「血便もある」
といった場合には、大腸カメラを含めた検査を考えることがあります。
注意したい症状④ 腹痛が続く
若年大腸がんでは腹痛も比較的よくみられる症状です。
とはいえ、若い方の腹痛の大部分が大腸がんというわけではありません。
便秘、感染性腸炎、過敏性腸症候群など、腹痛を起こす病気はたくさんあります。
ただし、
・同じ場所の痛みが長く続く
・徐々に症状が強くなる
・血便を伴う
・便通が変化した
・意図せず体重が減ってきた
といった場合には、一度原因を調べることをおすすめします。
注意したい症状⑤ 原因不明の貧血
大腸がんから少量の出血が続くと、目で見える血便がなくても鉄欠乏性貧血になることがあります。
特に右側の大腸では腸管が比較的広いため、便が細くなるなどの症状が出にくく、
「健康診断で貧血を指摘された」
「最近疲れやすい」
ということから見つかるケースがあります。
若い男性の原因不明の鉄欠乏性貧血や、女性でも月経だけでは説明しにくい貧血が続く場合には、胃や大腸など消化管からの出血が隠れていないか確認することがあります。
若い人ほど「診断が遅れる」ことに注意
若年発症大腸がんで特に問題となるのが、症状があっても大腸がんが疑われにくいことです。
若い方の血便であれば痔、腹痛なら過敏性腸症候群や胃腸炎など、実際には良性疾患の方が圧倒的に多いでしょう。
だからこそ判断が難しくなります。
重要なのは、すべての症状を「大腸がんかもしれない」と考えることではありません。
よくある病気を考えながらも、症状が繰り返したり長く続いたりする場合には、一度きちんと確認する。
これが大切です。
40歳からは症状がなくても大腸がん検診を
日本では、40歳以上の方を対象に便潜血検査による大腸がん検診が行われています。
国立がん研究センターの「大腸がん検診ガイドライン2024年度版」でも、便潜血検査は40〜74歳を対象とすることが推奨されています。日本では40〜50代の大腸がん罹患率が国際的にも高いことが、その理由の一つです。
便潜血検査で陽性になった場合には、「痔だと思うから」と放置せず、精密検査を受けることが重要です。
一方で、症状のない20代・30代の方全員が大腸カメラを受ける必要はありません。
血便を繰り返す、便通が変わった、原因不明の貧血がある、体重が減っている、大腸がんの家族歴があるなどの場合には、年齢だけで判断せず消化器内科へ相談してみてください。
医師監修コメント
大腸がんは高齢者に多い病気ですが、「若いから大腸がんではない」と年齢だけで判断することもできません。
特に大切なのは、血便や便の細さそのものよりも、「以前の自分と比べて変化があり、それが続いているか」を見ることです。
一度だけの症状で過度に心配する必要はありませんが、血便を繰り返す、便通の変化が続く、貧血を指摘されたといった場合には、一度消化器内科でご相談ください。
大腸カメラでは大腸がんを調べるだけでなく、将来がんになる可能性のある大腸ポリープを発見し、必要に応じて切除することもできます。
監修:東森医院 院長 東森 啓
消化器内科・内視鏡専門診療
ひらの色
血便や便秘、腹痛は、決して珍しい症状ではありません。
「こんなことで病院に行っていいのかな」
「まだ若いから大丈夫かな」
と迷われる方も多いと思います。
実際には何も問題がないこともたくさんあります。それを確認して安心していただくことも、私たち消化器内科の役割です。
東森医院では、地域のかかりつけ医として、ちょっとしたお腹の不調から胃カメラ・大腸カメラなどの専門的な検査まで、その方に必要な診療を一緒に考えています。
「いつもと少し違うな」と感じたときに、気軽に相談していただける医院でありたいと考えています。