2026年6月29日

大腸がんは早期発見と予防が大切ながんです
大腸がんは、日本人に多いがんの一つです。早期の段階では自覚症状がほとんどないことも多く、気づかないうちに進行してしまうことがあります。
一方で、大腸がんは早い段階で見つけることができれば、治療により良好な経過が期待できるがんでもあります。また、大腸がんの多くは、腺腫と呼ばれる大腸ポリープから時間をかけて発生すると考えられており、ポリープの段階で発見し、切除することで大腸がんの予防につながります。
そのため、大腸がん対策では「早期発見」と「予防」の両方がとても大切です。
便潜血検査とはどのような検査ですか?
大腸がん検診で広く行われているのが、便潜血検査です。
便潜血検査は、便の中に目に見えない血液が混じっていないかを調べる検査です。大腸がんや大腸ポリープでは、病変の表面から少量の出血が起こることがあり、その血液を検出することで、大腸がんやポリープの可能性を拾い上げます。
便を採取して提出するだけで行えるため、身体への負担が少なく、費用も比較的抑えられる検査です。そのため、地域全体で大腸がんを早く見つけるための検診として、非常に重要な役割を持っています。
これまでの2回法から、今後は1回法へ
これまで日本の大腸がん検診では、2日分の便を採取する「2回法」が標準的に行われてきました。
しかし、厚生労働省は今後、便潜血検査の採便回数を2日分から1日分、つまり「1回法」へ変更する方針を示しています。
この背景には、1回法と2回法を比較した研究で、大腸がんや前がん病変を見つける精度に明らかな差が示されなかったことがあります。また、便を2日分採取するよりも、1日分の方が患者様の負担が少なく、提出しやすいという利点があります。
検診は、精度だけでなく「実際に受けやすいこと」「継続しやすいこと」も非常に重要です。採便の負担が減ることで、検診を受ける方が増えれば、地域全体として大腸がんの早期発見につながることが期待されます。
当院では便潜血検査の1回法を採用しています
東森医院では、患者様の負担を減らし、検査を受けやすくするために、便潜血検査は1回法を採用しております。
「1回だけで大丈夫なのですか?」と不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、近年の検討では、1回法と2回法で大腸がんや悪性度の高いポリープを見つける精度に大きな差はないとされています。
大切なのは、便潜血検査を一度受けて終わりにするのではなく、定期的に受けることです。特に40歳以上の方は、年に1回の大腸がん検診を継続することが勧められます。
便潜血検査が陰性でも「絶対に安心」ではありません
便潜血検査は有用な検査ですが、陰性であっても「大腸がんや大腸ポリープが絶対にない」と言い切れるものではありません。
大腸がんや大腸ポリープは、毎日出血しているとは限りません。便を採取したタイミングでは出血していなかった場合、便潜血検査が陰性になることがあります。また、出血量が少ない病変や、がんになる前のポリープは、便潜血検査では拾い上げにくいことがあります。
つまり、便潜血検査の陰性は「今回提出した便では血液反応が出なかった」という意味であり、「大腸に病気がない」と完全に保証するものではありません。
特に、血便、便が細くなった、便秘や下痢を繰り返す、腹痛、貧血、体重減少などの症状がある場合は、便潜血検査が陰性でも大腸内視鏡検査を検討する必要があります。
便潜血検査が陽性なら、再検査ではなく精密検査を
便潜血検査が陽性になった場合、すぐに大腸がんと決まるわけではありません。痔、炎症、大腸ポリープなどでも陽性になることがあります。
しかし、便潜血検査が陽性になった場合に最も大切なことは、原因を確認することです。
「もう一度便潜血検査をして、陰性なら大丈夫」と考えてしまう方もいますが、これは正しい対応ではありません。大腸がんは毎日出血しているとは限らないため、再検査で陰性になっても、大腸がんやポリープを否定することはできません。
便潜血検査が陽性の場合は、原則として大腸内視鏡検査による精密検査が必要です。症状がない場合でも、自己判断で放置せず、必ず医療機関にご相談ください。
陽性でも、早く見つければ治療できる段階のことがあります
便潜血検査で陽性と言われると、不安になる方が多いと思います。
しかし、便潜血陽性は「大腸がんが確定した」という意味ではありません。むしろ、症状が出る前に大腸の異常を見つけるきっかけになります。
大腸がんは、早期に発見できれば治療成績が良いがんです。早期大腸がんであるStage Iでは、5年生存率が約93%と報告されています。
そのため、便潜血検査で陽性となった場合は、怖がって放置するのではなく、「早く見つけるチャンス」と考え、早めに大腸内視鏡検査を受けることが大切です。
大腸内視鏡検査は、発見だけでなく予防にもつながります
便潜血検査は、大腸がんの可能性を拾い上げるための検査です。一方、大腸内視鏡検査は、大腸の中を直接観察できる検査です。
大腸内視鏡検査では、便潜血検査では分からない小さなポリープや早期の病変を確認できることがあります。また、切除可能なポリープが見つかった場合には、検査中にそのまま切除できることがあります。
大腸がんの多くは、ポリープから時間をかけて発生すると考えられています。そのため、がんになる前のポリープを発見して切除することは、大腸がんの予防につながります。
つまり、大腸内視鏡検査は「がんを見つける検査」であると同時に、「がんを予防する検査」でもあります。
便潜血検査と大腸内視鏡検査は、どちらも大切です
医療制度全体で考えると、すべての方に最初から大腸内視鏡検査を行うことは簡単ではありません。大腸内視鏡検査には、前処置の負担、検査時間、医療費、検査枠、まれな偶発症などもあります。
そのため、症状のない多くの方を対象にした検診では、まず便潜血検査を行い、陽性となった方を大腸内視鏡検査につなげることが重要です。
一方で、便潜血検査だけでは限界があります。便潜血検査が陽性の方、症状がある方、過去に大腸ポリープを指摘された方、ご家族に大腸がんの方がいる方などは、大腸内視鏡検査を検討することが大切です。
便潜血検査は「受けやすい入口」として重要であり、大腸内視鏡検査は「詳しく調べ、必要に応じて治療や予防につなげる検査」といえます。
このような方はご相談ください
次のような方は、便潜血検査の結果にかかわらず、大腸内視鏡検査を検討されることをおすすめします。
・便潜血検査で陽性になった方
・血便がある方
・便が細くなった方
・便秘や下痢を繰り返す方
・腹痛やお腹の張りが続く方
・貧血を指摘された方
・体重減少がある方
・過去に大腸ポリープを指摘された方
・ご家族に大腸がんの方がいる方
・40歳以上で一度も大腸内視鏡検査を受けたことがない方
症状が軽い場合でも、自己判断せずに一度ご相談ください。
まとめ
便潜血検査は、身体への負担が少なく、大腸がん検診として非常に重要な検査です。今後、日本の大腸がん検診では、採便回数を2日分から1日分にする「1回法」へ変更される予定です。
1回法は、患者様の負担を減らし、検査を受けやすくする方法です。当院でも、便潜血検査は1回法を採用しております。
ただし、便潜血検査が陰性でも、大腸がんや大腸ポリープが完全に否定されるわけではありません。また、便潜血検査が陽性の場合は、再度便潜血検査を行うのではなく、大腸内視鏡検査による精密検査が必要です。
大腸がんは、早期に見つければ治療成績が良く、ポリープの段階で発見・切除することで予防につなげることもできます。
東森医院では、便潜血検査による大腸がん検診に加え、必要に応じて大腸内視鏡検査まで対応しております。便潜血検査で陽性になった方、症状が気になる方、大腸がんやポリープが心配な方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
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10.Zauber AG, et al. Colonoscopic Polypectomy and Long-Term Prevention of Colorectal-Cancer Deaths. N Engl J Med. 2012;366:687-696.
記事監修
監修者プロフィール
院長 東森 啓(ひがしもり あきら)
資格・所属学会
医学博士
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
日本消化器病学会 専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医
日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
日本カプセル内視鏡学会 認定医
日本消化管学会 専門医
日本医師会認定産業医
難病指定医
略歴・主な職歴
2008年 山口大学医学部 卒業
2016年 大阪市立大学大学院 医学研究科 博士課程修了
大阪公立大学 医学部 病院講師
香港中文大学 Prince of Wales Hospital 客員研究員
なにわ生野病院 副部長
ガイドライン作成・システマティックレビュー
H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024年改訂版 システマティックレビュー担当
薬剤性消化管障害ガイドライン 作成委員
消化性潰瘍診療ガイドライン システマティックレビュー担当
この度、東森医院の4代目として、大阪市平野区にて診療を行っております。大学病院・地域中核病院・海外の医療現場で培った幅広い内科・消化器診療、内視鏡診療、研究の経験を活かし、地域の皆さまに信頼していただける医療を提供してまいります。
当院では、最新の内視鏡システムと鎮静を用いた「苦痛の少ない胃カメラ・大腸カメラ」に力を入れております。また、日帰り大腸ポリープ切除術にも対応し、検査から治療まで一貫した内視鏡診療を提供しています。生活習慣病や一般内科診療にも対応し、病気の早期発見と予防医療を通じて、地域の皆さまの健康を支える“かかりつけ医”を目指してまいります。