2026年10月14日

「最近、お肉やご飯が胸のあたりでつかえる」
「食事の途中で水を飲むことが増えた」
「胸やけの薬を飲んでいるのに、すっきりしない」
このような症状はありませんか?
食べ物がつかえる原因には、逆流性食道炎や食道の運動障害、食道がんなどさまざまな病気があります。その中で、近年日本でも増えているのが好酸球性食道炎(Eosinophilic Esophagitis:EoE)です。
まだ聞き慣れない病名かもしれませんが、胃カメラを行っていると決して無視できない食道の病気になってきています。
好酸球性食道炎とは?
好酸球性食道炎は、食道に「好酸球」という白血球の一種が集まり、慢性的な炎症を起こす病気です。
食物などの抗原に対する免疫反応が関係すると考えられており、「2型炎症」と呼ばれる免疫反応が病気の発症に深く関わっています。
喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などを合併している方も少なくありません。ただし、一般的な食物アレルギーとまったく同じ病気ではなく、血液検査だけで原因となる食べ物を特定できるとは限りません。

好酸球性食道炎では炎症が長く続くと、食道の壁が硬くなり、線維化や狭窄を起こすことがあります。そのため、徐々に食べ物が通りにくくなることがあります。
実は日本でも増えている病気です
以前、好酸球性食道炎は欧米に多く、日本では珍しい病気と考えられていました。
しかし、近年は日本でも患者さんが増えています。
国内の大規模データを用いた研究では、2022年の好酸球性食道炎の有病率は人口10万人あたり10.68人で、2017年と比べて約8倍に増加していました。特に男性に多い傾向も認められています。
日本では胃がん検診や人間ドックなどで胃カメラを受ける方が多いため、症状がほとんどない段階で偶然見つかるケースがあることも特徴です。藤原靖弘先生らは、日本と欧米のEoEにはこうした臨床像の違いがあることを整理しています。
こんな「食べ方」になっていませんか?
好酸球性食道炎で最も特徴的なのは、食べ物のつかえ感や飲み込みにくさです。
たとえば、
といった症状や行動がみられます。
長く症状が続いている方では、こうした食べ方が当たり前になっていて、本人が「嚥下困難」と自覚していないこともあります。
そのほか、胸やけ、胸の違和感、のどのつかえ感、みぞおちの不快感など、逆流性食道炎とよく似た症状で見つかることもあります。
まれに食べ物が食道に完全につまってしまう「食物嵌頓」を起こすことがあります。水や唾液も飲み込めない場合には、緊急で内視鏡処置が必要になることがあります。
胸やけの薬が効かないときも要注意?
好酸球性食道炎と胃食道逆流症(GERD)・逆流性食道炎は、症状がよく似ています。
そのため「胸やけだから逆流性食道炎だろう」と思っていた方が、胃カメラを受けて初めて好酸球性食道炎と分かることがあります。
逆に、好酸球性食道炎でもPPIなど胃酸を抑える薬がよく効く場合があります。現在では「PPIが効いたからEoEではない」とは考えません。
「胸やけの薬を飲んでも症状が残る」「胸やけに加えて食べ物がつかえる」という場合には、一度食道をきちんと観察することが大切です。
好酸球性食道炎は胃カメラで分かる?
診断の中心になるのが胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)です。
好酸球性食道炎では、食道に特徴的な変化がみられることがあります。
代表的なのは、
縦走溝
食道の縦方向に沿って何本もの溝がみられます。
輪状溝(リング)
食道に輪のようなしわがみられます。
白色滲出物・白斑
粘膜に白い小さな点状の変化がみられます。
浮腫・狭窄
炎症によって粘膜がむくんだり、慢性的な炎症によって食道が狭くなったりすることがあります。
ただし、ここが重要です。
胃カメラで見た目の変化が軽くても、好酸球性食道炎を否定できるわけではありません。
症状や内視鏡所見から疑った場合には、食道粘膜を少量採取する生検(組織検査)を行います。
診断には「生検」が大切です
好酸球性食道炎では、一般的に食道上皮内に1高倍率視野あたり15個以上の好酸球を認めることが診断の重要な基準となります。
ただし、炎症は食道全体に均一に起こるわけではありません。
ある場所には好酸球が多く、別の場所には少ないことがあります。そのため、好酸球性食道炎を疑う場合には、必要に応じて食道の複数の場所から生検を行います。
最終的には、症状、胃カメラ所見、生検結果に加え、胃食道逆流症、薬剤、感染症などほかの原因がないかを含めて総合的に判断します。
好酸球性食道炎の治療は?
治療は患者さんの症状、胃カメラ所見、生検結果などをみながら選択します。
1.PPI・P-CABなどの酸分泌抑制薬
日本では、まずPPIやP-CABなどの酸分泌抑制薬を使用することが多くあります。
酸を抑えるだけでなく食道のバリア機能や炎症にも影響すると考えられており、日本人では比較的良好な治療効果が報告されています。国立成育医療研究センターでは、PPIによって約6~7割で症状や炎症の改善がみられると説明しています。
2.局所ステロイド嚥下療法
酸分泌抑制薬だけで十分に改善しない場合には、ステロイド製剤を飲み込んで食道粘膜に作用させる局所ステロイド嚥下療法を検討します。
3.食事療法
原因になりやすい食品を除く「除去食」も選択肢です。
ただし、原因食品を簡単に特定できるとは限らず、厳しい食事制限は生活への負担も大きいため、自己判断で極端な除去食を行うのではなく、医師と相談して進めることが大切です。
4.食道が狭くなっている場合
強い食道狭窄がある場合には、内視鏡を使って狭い部分を広げる治療を行うことがあります。
今後は「生物学的製剤」という新しい治療も
好酸球性食道炎では現在、2型炎症に関係するIL-4、IL-13、TSLPなどを標的とした生物学的製剤の研究・開発も進んでいます。
海外ではすでに生物学的製剤の臨床応用が進んでおり、日本でも難治例に対する新しい治療選択肢として期待されています。2026年の藤原先生らのレビューでも、日本と欧米の治療環境の違いを含め、EoE治療の進歩が整理されています。
東森医院での好酸球性食道炎の診療
東森医院では、食べ物のつかえ感や飲み込みにくさ、胸やけなどの症状を詳しく伺ったうえで、胃カメラによる食道の観察と、必要に応じた生検を行っています。
好酸球性食道炎では内視鏡所見が軽い場合もあるため、胃だけでなく、咽頭・食道から胃、十二指腸まで丁寧に観察することを大切にしています。
診断後はPPI・P-CABなどを中心に治療し、必要に応じて局所ステロイドなども検討します。
また、食道狭窄を伴う場合や通常の治療で十分に改善しない場合など、より専門的な診療が必要な際には、大阪公立大学医学部附属病院などと連携して診療を行います。
参考文献
Sawada A, et al. Epidemiology and Risk Factors of Eosinophilic Esophagitis in Japan: A Population-Based Study. Clin Gastroenterol Hepatol. 2024. doi:10.1016/j.cgh.2024.04.024. PubMed
Fujiwara Y. Symptom-based diagnostic approach for eosinophilic esophagitis. J Gastroenterol. 2020;55(9):833-845. doi:10.1007/s00535-020-01701-y. PubMed
Fujiwara Y, Tanaka F, Nakata R, et al. Current real-world treatments for Japanese patients with eosinophilic esophagitis. Nihon Shokakibyo Gakkai Zasshi. 2022;119(10):929-936. doi:10.11405/nisshoshi.119.929. PubMed
Fujiwara Y, Sawada A, Hosomi S, Tanaka F. Differences in adult eosinophilic esophagitis between Japan and Western countries. J Gastroenterol. 2026;61(6):711-718. doi:10.1007/s00535-026-02351-2. PubMed
Fujiwara Y, et al. Similarity and difference in the characteristics of eosinophilic esophagitis between Western countries and Japan. Dig Endosc. 2021. PubMed
日本消化器病学会.消化器のひろば「好酸球性消化管疾患」.
国立成育医療研究センター.好酸球性食道炎について.
記事監修
東森医院 院長 東森 啓(ひがしもり あきら)
医学博士
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
日本消化器病学会 専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医
日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
日本カプセル内視鏡学会 認定医
日本消化管学会 専門医
日本医師会認定産業医
難病指定医
ひらの色。
ひとにやさしく。
らくに受けられる。
のぞむ明日を、もっと近くに。
「食べ物がつかえる」「少し飲み込みにくい」。
そんな小さな違和感でも、毎日の食事のことだからこそ、気になったときに相談できる場所でありたいと思っています。
東森医院では、地域の身近なかかりつけ医としての診療と、消化器・内視鏡の専門性の両方を大切にしながら、一人ひとりに合った検査と治療をご提案します。必要なときには大学病院などとも連携し、次の診療へしっかりとつないでいきます。