採血だけで大腸がんがわかる時代に?それでも大腸カメラが必要な理由|大阪市平野駅の胃カメラ検査・大腸カメラ検査|東森医院

〒547-0044 大阪府大阪市平野区平野本町3-5-2

06-6791-0067

24時間いつでも受付WEB予約 LINE予約はこちら
お問い合わせ Instagram
下層メインビジュアル

採血だけで大腸がんがわかる時代に?それでも大腸カメラが必要な理由

採血だけで大腸がんがわかる時代に?それでも大腸カメラが必要な理由|大阪市平野駅の胃カメラ検査・大腸カメラ検査|東森医院

2026年9月04日

採血だけで大腸がんがわかる時代に?それでも大腸カメラが必要な理由

「大腸がんが、採血だけでわかるようになったらしい」

最近、このようなニュースを目にする機会が増えてきました。

大腸カメラには下剤を飲む必要があり、「できれば受けたくない」と感じている方も少なくありません。そのため、「血液検査だけで大腸がんがわかるなら、大腸カメラはもう必要ないのでは?」と思う方もいらっしゃるでしょう。

実際、海外では血液から大腸がんのサインを調べる技術が急速に進歩しており、米国ではすでにFDA(米国食品医薬品局)が承認した大腸がんの血液検査が登場しています。

一方、日本ではまだ状況が異なります。

そして、この話を理解するうえで非常に大切なのが、「大腸がんを見つけること」と「大腸がんになる前に見つけて予防すること」は同じではないという点です。

今回は、大腸がんの血液検査が現在どこまで進んでいるのか、日本ではどのような位置づけなのか、そしてなぜ現在でも大腸カメラが重要なのかを、できるだけわかりやすく解説します。

1.本当に「採血で大腸がんがわかる」時代になってきています

これは決して大げさな話ではありません。

がん細胞ができると、その細胞から放出されたDNAの一部が血液中に流れ出します。近年では、この血液中に存在するcell-free DNA(cfDNA)を詳しく解析し、がんに特徴的なDNAの変化を見つける技術が大きく進歩しています。

2024年、米国FDAはShield(シールド)という大腸がんの血液検査を承認しました。対象は45歳以上で、大腸がんのリスクが特別高くない一般の方です。

FDA承認の根拠となった大規模研究では、実際に大腸がんがあった人の83.1%を血液検査で陽性として検出することができました。

簡単に言えば、大腸がん患者さん10人のうち、およそ8人を採血で見つけることができたということです。

さらに2026年7月には、SimpleScreen CRCという別の大腸がん血液検査もFDAに承認されました。こちらも45歳以上の平均的なリスクの方が対象で、大腸がんの検出感度は約79%でした。

米国ではこのように、大腸がん検診に血液検査を利用する時代が実際に始まっています。American Cancer Society(米国がん協会)も2026年の大腸がん検診ガイドラインにおいて、血液検査を選択肢のひとつに加えました。

これは非常に大きな進歩だと思います。

しかし、この数字だけを見ると、当然ひとつの疑問が出てきます。

「それなら、大腸カメラはもう受けなくてもいいのでは?」

実は、ここに現在の血液検査の重要な課題があります。

2.「大腸がん」は見つけられても、「がんになる前のポリープ」はまだ苦手です

大腸がんの多くは、正常な大腸粘膜から突然大きながんになるわけではありません。

多くの場合、まず大腸にポリープができ、その一部が時間をかけて徐々に変化し、大腸がんへ進んでいきます。

そのため、まだがんになる前の段階でポリープを見つけて切除することができれば、将来の大腸がんそのものを予防できる可能性があります。

これが、大腸カメラの非常に大きな特徴です。

ところが現在の血液検査は、すでにできた大腸がんを見つける能力はかなり高くなっている一方で、この「がんになる前の病変」を見つけることは、まだあまり得意ではありません。

Shieldでは、大腸がんそのものの検出感度は83.1%でしたが、進行前がん病変の検出感度は約13%でした。

SimpleScreen CRCについても同様で、大腸がんの約79%を検出できた一方で、進行前がん病変の検出率は約13%にとどまっています。

つまり、現在の血液検査は、「すでにできている大腸がんを見つける検査」としては非常に進歩してきましたが、「がんになる前に見つけて予防する検査」としては、まだ大腸カメラとの差が大きいということです。

FDAも、これらの血液検査について、陽性になった場合には大腸カメラによる精密検査が必要であり、診断目的の大腸カメラや、高リスクの方の定期的な大腸カメラの代わりになる検査ではないとしています。

ここは非常に大切なポイントです。

「採血で大腸がんを見つけられる」ことと、「採血だけで大腸カメラが不要になる」ことは、まったく同じ意味ではありません。

3.もうひとつの重要な問題。「陽性=がん」ではありません

新しいがん検査について考えるとき、もうひとつ知っておいていただきたいことがあります。

それが「偽陽性」です。

血液検査で「陽性」と結果が出ると、多くの方は「自分はがんなのではないか」と不安になります。

しかし、どんな検査でも100%正確ということはありません。

実際にはがんがないにもかかわらず、検査では陽性になる方が一定数います。これを偽陽性といいます。

反対に、実際にはがんがあるにもかかわらず、検査結果が陰性になることを偽陰性といいます。

これは新しい血液検査だけの問題ではありません。現在広く行われている便潜血検査にも、偽陽性と偽陰性はあります。

ただし、日本の便潜血検査では、その後の対応が比較的明確です。便潜血検査が陽性になれば、大腸カメラによる精密検査を行います。そして、ポリープや大腸がんなどが見つかれば、それに応じた治療へ進みます。

一方、新しい血液検査、とくに複数のがんを一度に調べるような検査では、「陽性になった後にどこまで調べればよいのか」が難しい問題になります。

大腸がんを対象とした血液検査であれば、まず大腸カメラを行います。

それでは、大腸カメラをしても大腸がんが見つからなかった場合はどうすればよいのでしょうか。

胃カメラも行うのか。腹部CTを撮影するのか。PET-CTまで必要なのか。それとも、大腸カメラが正常であれば一度検査を終了してよいのか。

これは非常に難しい問題です。

例えばSimpleScreen CRCのFDA審査データでは、27,010人のうち2,443人が血液検査陽性となりましたが、そのうち実際に大腸がんが確認されたのは57人でした。

これは決して「検査に意味がない」ということではありません。

健康な人を大勢検査する場合、もともと大腸がんを持っている人の割合はそれほど高くありません。そのため、かなり性能のよい検査であっても、「陽性だったけれど、大腸がんではなかった」という方が一定数生じることは避けられません。

だからこそ、新しいがん検査を評価するときには、「感度95%」「特異度98%」といった数字だけを見るのではなく、陽性になったあとに何をするのか、その診療の流れまで確立されているかを見ることが非常に重要です。

「検査できる」ことと、「検診として安心して使える」ことは、少し違うのです。

4.では、日本では採血だけで大腸がんを調べられるのでしょうか?

ここは特に誤解されないよう、はっきり整理しておきたいと思います。

2026年8月現在、日本では、無症状の一般の方を対象として、採血だけで大腸がんをスクリーニングすることを目的に国が推奨している標準的な大腸がん検診はありません。

日本で現在推奨されている大腸がん検診の基本は、便潜血検査です。

40歳以上の方を対象として、原則として年1回行われています。そして便潜血検査が陽性になった場合には、大腸カメラによる精密検査を受けることが重要です。

国立がん研究センターの「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン2024年度版」においても、便潜血検査免疫法は推奨グレードAとされています。

ここで、「健康診断などでCEAやCA19-9という採血をしたことがある」という方もいらっしゃると思います。

CEAやCA19-9はいわゆる腫瘍マーカーで、大腸がんの患者さんでも測定することがあります。

しかし、CEAが正常だからといって大腸がんがないとは言えません。特に早期の大腸がんでは、CEAが正常であることも珍しくありません。

逆に、CEAが高いからといって必ず大腸がんというわけでもありません。喫煙や炎症など、がん以外の理由で上昇する場合もあります。

そのため、CEAなどの腫瘍マーカーを測定するだけで、大腸がん検診の代わりにすることはできません。

近年では、日本でも自費診療として、採血や尿などからさまざまながんのリスクを調べる検査が提供されています。

こうした新しい検査には大きな可能性がありますが、国が推奨するがん検診や、保険診療で行う精密検査とは分けて考える必要があります。

「採血で調べられる」ということと、「その検査によって大腸がんによる死亡を減らせることが科学的に証明され、標準的ながん検診として推奨されている」ということは同じではありません。

現時点の日本では、症状のない一般の方の大腸がん検診では便潜血検査が基本であり、便潜血陽性や血便、貧血、便通異常などがある場合には、大腸カメラによる詳しい検査を行うという流れが基本となります。

もちろん、「大腸カメラが重要」ということは、症状のないすべての方が毎年大腸カメラを受けるべきという意味ではありません。

大腸カメラには下剤を飲む負担がありますし、頻度は非常に低いものの、出血や穿孔などの偶発症もあります。

そのため、日本の一般住民を対象とした大腸がん検診では、まず便潜血検査を行うという方法が推奨されています。

便潜血検査と大腸カメラは、どちらか一方を選ぶというより、それぞれ異なる役割を持った検査です。

5.私自身も、新しい「がんマーカー」の研究に携わってきました

実は私自身も、以前、香港中文大学のPrince of Wales Hospitalに留学していた際、胃がんや大腸がんの新しいバイオマーカーや、体への負担が少ない検査方法の研究に携わっていました。

「バイオマーカー」という言葉は少し難しいですが、簡単に言えば、がんの方に特徴的にみられ、がんを見つける手がかりとなるものです。

大腸がんについては、便の中に存在する腸内細菌を利用して、より負担の少ない方法で大腸がんを見つけられないかという研究を行いました。

その研究では、Fusobacterium nucleatum(フソバクテリウム・ヌクレアタム)など特定の腸内細菌が大腸がん患者さんの便で増えていることを調べ、便潜血検査と組み合わせることで、大腸がんの検出性能をさらに高められる可能性を報告しました。この研究は2017年にClinical Cancer Researchに掲載されています。

また胃がんについては、DNAの「メチル化」と呼ばれる変化に着目し、FOXF2という遺伝子と胃がんとの関係について研究しました。この研究は2018年にCancer Researchに掲載されています。

こうした研究に携わってきたこともあり、私は、採血、便、尿などを使って、できるだけ体への負担を少なくがんを早期発見する技術には大きな期待を持っています。

将来的には、健康診断で採血をするだけで、さまざまながんの可能性を早期に調べられる時代が本当に来るかもしれません。

一方、実際に研究をしてきた立場から感じるのは、「がん患者さんと健康な方で差が出るマーカーを見つけること」と、「その検査を何万人もの健康な方にがん検診として使えるようにすること」は、まったく別の問題であるということです。

早期のがんをどのくらい見つけられるのか。がんになる前の病変まで見つけられるのか。本当はがんではない方をどのくらい陽性にしてしまうのか。逆に、がんがあるのに陰性になってしまう方がどのくらいいるのか。陽性になった場合、その次にどの検査を行うのか。そして最終的に、その検査を受けることで本当にがんによる死亡を減らせるのか。

そこまで検証して初めて、広く「がん検診」として使える検査になります。

新しい検査だから良い、数字が高いから良い、というだけでは判断できないところが、がん検診の難しいところです。

6.それでも、なぜ大腸カメラが必要なのでしょうか?

ここまで読むと、「結局、大腸カメラを受けたほうがいいという話なの?」と思われるかもしれません。

私が最もお伝えしたいのは、少し違います。

採血による大腸がん検査は、非常に期待できる新しい技術です。

大腸カメラに抵抗があり、便潜血検査さえ受けていなかった方が、「採血なら受けてみよう」と思うかもしれません。

大腸がん検診は、どれだけ精度のよい検査であっても、実際に受けてもらえなければ意味がありません。その意味で、体への負担が少ない血液検査によって検診を受ける方が増えることには、大きな価値があります。

一方、大腸カメラには血液検査にはない大きな特徴があります。

それは、大腸を直接見ることができ、さらに必要であればその場で治療までできることです。

大腸カメラでは、大腸の中を直接観察し、大腸がんやポリープを見つけることができます。そして、大きさや形によっては、大腸がんになる可能性のあるポリープをその場で切除することができます。

血液検査は、大腸がんが存在する可能性を示す「サイン」を探す検査です。

一方、大腸カメラは、大腸そのものを直接観察し、病変があれば組織を採取し、場合によってはその場でポリープを切除することができます。

ここに大きな違いがあります。

大腸がんの予防で重要なのは、「がんになってからできるだけ早く見つけること」だけではありません。

そのさらに前の段階で、**「がんになる可能性のあるポリープを見つけて切除すること」**も非常に重要です。

この「がんになる前に見つけて取る」という役割を担うことができるのが、大腸カメラです。

その意味で、大腸カメラは現在も、大腸の精密検査の中心となる検査であり、大腸がん予防において非常に重要な位置を占めています。

特に、便潜血検査が陽性だった方、血便がある方、原因不明の貧血がある方、これまでと便通が変わった方、大腸ポリープを切除したことがある方、大腸がんの家族歴がある方、医師から大腸カメラを勧められている方については、「別の血液検査が陰性だったから、大腸カメラは必要ない」と自己判断しないことが大切です。

まとめ 採血と大腸カメラは「どちらか一方」ではありません

採血だけで大腸がんを見つける技術は、確実に進歩しています。

米国ではすでにFDA承認の血液検査が登場し、2026年には米国がん協会も血液検査を大腸がん検診の選択肢に加えました。

今後さらに性能の高い検査が開発されれば、将来的には日本の大腸がん検診の方法も変わっていく可能性があります。

私自身、がんの新しいバイオマーカー研究に携わってきた経験からも、こうした技術の進歩には大きな期待を持っています。

ただし、2026年8月現在、日本では、採血だけによる大腸がん検査が、国の推奨する標準的な大腸がん検診になっているわけではありません。

また、現在の血液検査には、大腸がんそのものは比較的よく見つけられても、「がんになる前の病変」を見つける力はまだ十分ではないという大きな課題があります。

大腸がんの予防で非常に重要なのは、「がんになってから早く見つける」ことだけではなく、「がんになる前のポリープを見つけて切除する」ことです。

現時点では、日本の一般的な大腸がん検診の基本は便潜血検査です。そして、便潜血陽性や症状のある方の精密検査の中心は大腸カメラです。

さらに、大腸ポリープを発見して切除することで大腸がんそのものを予防するという点でも、大腸カメラは非常に重要な検査です。

採血だけで大腸がんを調べられる時代は、確実に近づいています。

しかし、現時点ではまだ、「採血があるから大腸カメラはもういらない」という時代にはなっていません。

これからは、新しい血液検査の便利さや可能性を生かしながら、便潜血検査や大腸カメラを適切に組み合わせていくことが重要になると考えています。

参考文献

Chung DC, et al. A Cell-free DNA Blood-Based Test for Colorectal Cancer Screening. N Engl J Med. 2024;390:973-983. doi:10.1056/NEJMoa2304714.

U.S. Food and Drug Administration. Shield – P230009. FDA approval, July 26, 2024.

U.S. Food and Drug Administration. SimpleScreen CRC – P250029. FDA approval, July 24, 2026.

American Cancer Society. Colorectal Cancer Screening Guideline, 2026.

国立がん研究センターがん対策研究所. 有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン 2024年度版.

国立がん研究センター. 大腸がんファクトシート2024.

Liang Q, Chiu J, Chen Y, Huang Y, Higashimori A, et al. Fecal Bacteria Act as Novel Biomarkers for Noninvasive Diagnosis of Colorectal Cancer. Clin Cancer Res. 2017;23:2061-2070. doi:10.1158/1078-0432.CCR-16-1599.

Higashimori A, Dong Y, Zhang Y, et al. Forkhead Box F2 Suppresses Gastric Cancer through a Novel FOXF2-IRF2BPL-β-Catenin Signaling Axis. Cancer Res. 2018;78:1643-1656. doi:10.1158/0008-5472.CAN-17-2403.

記事監修

監修者プロフィール

院長 東森 啓(ひがしもり あきら)

資格・所属学会

医学博士
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
日本消化器病学会 専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医
日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
日本カプセル内視鏡学会 認定医
日本消化管学会 専門医
日本医師会認定産業医
難病指定医

略歴・主な研究歴

2008年 山口大学医学部 卒業
2016年 大阪市立大学大学院 医学研究科 博士課程修了

香港中文大学 Prince of Wales Hospitalに留学し、胃がん・大腸がんの分子生物学、新規バイオマーカー、非侵襲的ながん診断に関する研究に従事。

現在、東森医院 院長として、一般内科・消化器診療および胃カメラ・大腸カメラを中心とした内視鏡診療を行っている。

TOP