2026年8月28日

健康診断や大腸がん検診で「便潜血陽性」「要精密検査」と書かれていると、「大腸がんなのでは?」と心配になる方も多いと思います。
また、「2回のうち1回だけ陽性だったけれど、大腸カメラは必要ですか?」「もう一度便潜血検査をして、陰性なら大丈夫ですか?」というご質問もよくいただきます。
結論からいうと、便潜血検査は1回でも陽性になれば、大腸カメラによる精密検査を受けることがすすめられます。
ただし、最初に知っていただきたいのは、便潜血陽性=大腸がんではないということです。便潜血陽性の方に大腸カメラを行って、実際に大腸がんが見つかる割合は数%程度です。一方で、大腸ポリープなどが見つかる方は少なくありません。
つまり、必要以上に怖がる必要はありませんが、「1回だけだから」「症状がないから」と放置もしないことが大切です。
今回は、便潜血陽性になったらなぜ大腸カメラが必要なのか、1回だけ陽性の場合はどう考えるのか、便潜血検査をもう一度やり直してもよいのかなどについて、消化器内視鏡専門医が分かりやすく解説します。
1.便潜血陽性になると、大腸がんの確率はどれくらい?
便潜血検査は、便の中に目では見えない程度の血液が混じっていないかを調べる検査です。
大腸がんや大腸ポリープの表面は正常な大腸粘膜よりも出血しやすく、便が通過するときなどに少量の血液が付着することがあります。この血液を検出し、大腸がんを早期に発見するきっかけにするのが便潜血検査です。
では、便潜血陽性になった方のうち、実際に大腸がんが見つかるのはどれくらいなのでしょうか。
日本の大規模な内視鏡データでは、便潜血陽性をきっかけに大腸カメラを受けた方のうち、早期がんが1.9%、進行がんが2.5%、合わせて約4.4%に大腸がんが認められました。また、海外の研究をまとめた大規模なメタ解析でも、大腸がんの発見率は約5%でした。
したがって、患者さんには、**「便潜血陽性の方のうち、大腸がんが見つかるのはおおむね数%程度」**と考えていただくとよいでしょう。
つまり、便潜血陽性になったからといって、大腸がんである可能性が非常に高いわけではありません。実際には大腸がんではない方のほうが圧倒的に多くなります。
一方、日本の同じ研究では、便潜血陽性の方の41.6%に大腸腺腫が認められています。大腸腺腫はすべてががんになるわけではありませんが、一部は時間をかけて大腸がんへ進展する可能性があります。
そのため便潜血検査の役割は、「大腸がんを見つける」だけではありません。大腸カメラを受けるきっかけをつくり、将来がんになる可能性のあるポリープを見つけて治療することも、大きな意味があります。
便潜血陽性は、「大腸がんの可能性が高い」という結果ではなく、「一度、大腸の中をきちんと確認しておきましょう」というサインと考えていただくのがよいでしょう。
2.便潜血が2回のうち1回だけ陽性でも、大腸カメラは必要?
現在、健康診断などでは2日分の便を採取する便潜血検査が広く行われています。
「1日目は陽性だったけれど、2日目は陰性だったので大丈夫ですよね?」と思われる方も少なくありません。
しかし、2回のうち1回だけ陽性の場合でも、精密検査として大腸カメラを受けることがすすめられます。
その理由は、大腸がんや大腸ポリープが毎日出血しているわけではないからです。
病変の表面を便が通ったときには出血して陽性になる一方、別の日には出血せず陰性になることがあります。そのため、1回が陰性だったことを理由に、もう1回の陽性を「なかったこと」にすることはできません。
国立がん研究センターも、1日分でも便潜血検査が陽性となった場合には精密検査を受ける必要があるとしています。
実際、日本の研究では、便潜血2日法で2回とも陽性だった方は大腸がんの発見率が高くなりますが、1回だけ陽性だった方からも大腸がんは発見されています。
ここで重要なのは、「2回陽性か1回陽性か」で大腸カメラを受けるかどうかを決めるのではなく、一度でも陽性になったら、その原因を大腸カメラで確認することです。
なお、2026年7月の厚生労働省の検討会では、今後の大腸がん検診について、便潜血検査を1日法へ改正する方針が示されています。1日法と2日法では、大腸がんやAdvanced Neoplasiaに対する感度・特異度に統計学的な差が示されておらず、1日法によって検診を受ける方が増えることも期待されています。
今後1日法が広がれば、そもそも「2回のうち1回だけ陽性」という考え方自体が少なくなっていく可能性があります。
大切なのは採便回数ではなく、「便潜血検査で陽性になったら精密検査へ進む」ということです。
3.便潜血検査をもう一度やり直して陰性なら大丈夫?痔があっても大腸カメラは必要?
便潜血陽性を指摘されたあと、「大腸カメラは大変そうなので、まず便潜血検査をもう一度やってみたい」と考える方もおられます。
しかし、便潜血検査を再検して陰性になったとしても、精密検査を受けなくてよいということにはなりません。
先ほど説明した通り、大腸がんや大腸ポリープからの出血は毎日起こるわけではありません。
例えば、最初の検査では病変から少量の出血があり陽性、再検査をした日は出血しておらず陰性ということは十分に起こります。そのため、便潜血検査をもう一度行うことは、大腸カメラの代わりにはなりません。
国立がん研究センターでも、便潜血陽性となった場合に便潜血検査をもう一度受けることは、精密検査の代わりにならないと明記されています。
また、「痔があるから陽性になったのだと思います」というご相談も非常に多くあります。
確かに、痔から出血すれば便潜血検査が陽性になることがあります。しかし、便潜血検査だけでは、その血液が痔から出たのか、大腸ポリープや大腸がんから出たのかを区別することはできません。
痔がある方に大腸ポリープや大腸がんが同時に存在することもあります。そのため、「痔だから大丈夫」と自己判断するのではなく、一度大腸全体を確認しておくことが大切です。
同様に、「腹痛もないし、便通も普通だから大丈夫」という考え方にも注意が必要です。早期の大腸がんや大腸ポリープでは、ほとんど症状がないことも珍しくありません。
そもそも便潜血検査による大腸がん検診は、症状がない段階で病変を見つけるための検査です。
ただし、最近すでに質の高い大腸カメラを受けて「異常なし」と診断されたあとに便潜血陽性となった場合には、少し事情が異なります。どの程度の期間で再度大腸カメラを行うべきかについては一律の基準が定まっていないため、前回の検査時期や検査結果、家族歴などを踏まえて担当医と相談することをおすすめします。
4.もし大腸がんが見つかったら?早く見つけることには大きな意味があります
「便潜血陽性と言われて、大腸カメラを受けるのが怖い」という方もおられると思います。
しかし、仮に大腸がんが見つかったとしても、早い段階で発見できれば、治療できる可能性は十分にあります。
特に、がんが大腸の表面近くにとどまり、リンパ節転移の可能性がほとんどない早期大腸がんであれば、お腹を切る手術をせず、大腸カメラを使った内視鏡治療だけで完全に切除できる場合があります。
また、「進行がん」と聞くと、「もう治らない」「手遅れ」という印象を持たれる方もいるかもしれません。しかし、医学的な意味での「進行大腸がん」と「治療できない大腸がん」は同じではありません。
早期がんより深く大腸の壁へ入り込んだ進行がんでは手術が必要になることが多くなりますが、リンパ節や他の臓器への広がりなどを詳しく調べ、病期に応じて治療方針を決めます。進行がんであっても、病期によっては手術によって根治を目指すことができます。
だからこそ、便潜血陽性の段階で大腸カメラを受ける意味があります。
大腸がん検診の目的は、「がんかもしれない」と怖がらせることではありません。症状が出る前の、より治療しやすい段階で大腸がんを見つけること、そして大腸がんになる前のポリープを見つけて切除することが大切です。
便潜血陽性になった方の多くは大腸がんではありません。しかし、その中から治療が必要な大腸がんや大腸ポリープを見つけるために、大腸カメラという次の検査があります。
「がんだったら怖いから検査を受けない」のではなく、**「もし病変があるなら、治療できるうちに見つけるために検査を受ける」**と考えていただければと思います。
5.便潜血陽性と言われたら、放置せず大腸カメラを受けましょう
便潜血陽性は、緊急性の高い病気が確定したという意味ではありません。そのため、「結果が届いたら今日、明日にでも大腸カメラを受けなければならない」というものではありません。
一方で、何か月も何年もそのままにしてよい結果でもありません。
健康診断で便潜血陽性を指摘されたら、予定を調整して大腸カメラによる精密検査を受けることをおすすめします。
特に、目で見て分かる血便がある、最近便が細くなった、便秘や下痢など便通の変化が続いている、原因の分からない貧血がある、体重が減ってきた、親や兄弟など血縁者に大腸がんの方がいる場合には、早めに消化器内科へご相談ください。
大腸カメラでは、大腸の中を直接観察し、大腸がんや大腸ポリープ、炎症などがないかを確認できます。また、治療可能な大腸ポリープが見つかった場合には、その場で切除できることもあります。
東森医院では、便潜血陽性の精密検査として大腸カメラを行っています。検査への不安が強い方や、以前の大腸カメラがつらかったという方には、年齢や持病などを確認したうえで鎮静剤を使用した検査にも対応しています。
また、大腸カメラの下剤はご自宅で服用する方法だけでなく、院内で服用する方法も選択できます。検査中に治療可能な大腸ポリープが見つかった場合には、安全性を確認したうえで日帰りポリープ切除にも対応しています。
最後にもう一度お伝えしたいのは、便潜血陽性=大腸がんではないということです。
実際に大腸がんが見つかる割合は数%程度で、多くの方は大腸がんではありません。
だからといって、「大丈夫だろう」と放置してしまうのも適切ではありません。
必要以上に怖がらず、でも放置せず、一度きちんと大腸カメラを受ける。
これが便潜血陽性と言われたときに最も大切なことです。
大阪市平野区で「健康診断で便潜血陽性と言われた」「便潜血が1回だけ陽性だった」「便潜血陽性なので大腸カメラを受けたい」という方は、東森医院までご相談ください。
参考文献・参考資料
国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん検診について」
厚生労働省「がん検診のあり方に関する検討会 大腸がん検診について」
厚生労働省「第47回がん検診のあり方に関する検討会 精密検査に係る指針上の記載について」
Matsuda T, et al. Current status of diagnostic and therapeutic colonoscopy in Japan: The Japan Endoscopic Database Project. Digestive Endoscopy. 2021.
Toyoshima O, et al. Priority stratification for colonoscopy based on two-sample faecal immunochemical test screening: results from a cross-sectional study at an endoscopy clinic in Japan. BMJ Open. 2021;11.
Nass KJ, et al. Pooled rates of adenoma detection by colonoscopy in asymptomatic average-risk individuals with positive fecal immunochemical test: a systematic review and meta-analysis. 2022.
大腸癌研究会「大腸癌治療ガイドライン 医師用2024年版」
記事監修
監修者プロフィール
院長 東森 啓(ひがしもり あきら)
資格・所属学会
医学博士
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
日本消化器病学会 専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医
日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
日本カプセル内視鏡学会 認定医
日本消化管学会 専門医
日本医師会認定産業医
難病指定医
略歴・主な職歴
2008年 山口大学医学部 卒業
2016年 大阪市立大学大学院 医学研究科 博士課程修了
大阪公立大学医学部附属病院などで消化器内科・消化器内視鏡診療に従事
現在 東森医院 院長