2026年9月11日

健康診断で「脂肪肝」「肝機能異常」を指摘されたものの、「特に症状もないから」と、そのままになっていませんか。
脂肪肝は非常によくみられる病気です。そのため、「少し太っているだけ」「お酒を減らせば大丈夫」と軽く考えられがちです。
確かに、脂肪肝のすべてが肝硬変や肝がんへ進むわけではありません。しかし、一部の方では肝臓に炎症が起こり、少しずつ線維化、つまり「肝臓が硬くなる変化」が進んでいきます。
そして2026年6月、日本の脂肪肝診療に大きな変化がありました。
GLP-1受容体作動薬「ウゴービ(一般名:セマグルチド)」が、一定の条件を満たすMASHに対する治療薬として承認されました。日本で初めて、MASHそのものを対象とした薬物治療が登場したことになります。
ただし、「脂肪肝ならウゴービを使えばよい」ということではありません。
これからの脂肪肝診療で最も大切なのは、脂肪肝を見つけた後に「肝臓の線維化が進んでいないか」をきちんと評価することです。
脂肪肝は放置しても大丈夫?
脂肪肝には、比較的進行しにくいものから、肝臓に炎症を起こして線維化が進んでいくものまであります。
現在、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの代謝異常と関連する脂肪性肝疾患は「MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」と呼ばれています。
その中でも、肝臓に脂肪がたまるだけではなく、炎症や肝細胞障害を伴う状態が「MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)」です。以前「NASH」と呼ばれていた病態に相当します。
MASHが問題となる理由は、肝臓の線維化が徐々に進行し、肝硬変や肝がんにつながる可能性があるためです。
一方で、自覚症状はほとんどありません。
「痛くない」「体調は悪くない」からといって、肝臓の状態が軽いとは限らないのが脂肪肝の難しいところです。
健康診断で脂肪肝と言われたら、FIB-4 indexを確認
脂肪肝を指摘されたときに重要なのは、「脂肪があるかどうか」だけではありません。
「肝線維化が進んでいる可能性があるか」を確認する必要があります。
その入口として利用されるのが「FIB-4 index(FIB-4インデックス)」です。
FIB-4 indexは、年齢、AST、ALT、血小板数という通常の血液検査から計算できる肝線維化の指標です。特殊な検査ではなく、普段の採血結果から算出できることが大きな特徴です。
ただし、FIB-4 indexだけで「MASHです」「肝線維化F2です」と診断できるわけではありません。あくまで、さらに詳しく調べる必要がある方を見つけるための重要なスクリーニング検査です。
2026年のウゴービの最適使用推進ガイドラインでも、FIB-4 indexを含む血液検査に加えて、VCTE(FibroScan)、超音波エラストグラフィ、MRE、その他の線維化マーカー、画像所見などを組み合わせて肝線維化を評価することが示されています。
東森医院ではFIB-4 indexと腹部エコーの両方で評価します
大阪市平野区の東森医院では、脂肪肝や肝機能異常を指摘された方に対して、血液検査だけで終わらせず、必要に応じてFIB-4 indexと腹部エコーを組み合わせて評価しています。
腹部エコーでは、脂肪肝の有無や程度だけでなく、肝臓の形態、肝硬変を疑う変化、肝腫瘍の有無などを確認します。同時に胆のう、胆管、膵臓、腎臓など腹部臓器も観察することができます。
一方、FIB-4 indexでは血液検査から肝線維化のリスクを評価します。
つまり、「エコーで脂肪肝があるから終わり」でも、「AST・ALTが少し高いから経過観察」でもありません。
血液検査と画像検査の両方から、その脂肪肝をさらに詳しく調べる必要があるのかを判断することが大切です。
FIB-4 indexが高い方、血小板数が低下している方、肝機能異常が続いている方、糖尿病や肥満を合併している方などでは、必要に応じて肝硬度測定、MRI、肝生検などが可能な専門医療機関へご紹介します。
2026年、日本初のMASH治療薬「ウゴービ」が登場
2026年6月19日、ウゴービにMASHの適応が追加されました。
対象となるのは、
「肝硬変を伴わないMASHで、中等度または高度の肝線維化を有する患者さん」
です。
具体的には、原則として肝線維化ステージF2またはF3のMASHが治療対象となります。
大切なのは、「脂肪肝がある=ウゴービの適応」ではないということです。
F0やF1と呼ばれる比較的線維化の軽い脂肪肝から、F2、F3、そして肝硬変に相当するF4まで、脂肪肝の中にもさまざまな段階があります。
ウゴービによるMASH治療を検討するためには、まず本当にMASHなのか、そして線維化がどの程度進んでいるのかを適切に評価する必要があります。
ウゴービは、どこの病院でもMASHに処方できるわけではありません
「ウゴービがMASHに保険適用になったのなら、近くのクリニックですぐ処方してもらえるのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、MASHに対するウゴービ治療には、国が定めた「最適使用推進ガイドライン」があります。
消化器病・肝臓領域の専門医だけでなく、糖尿病、内分泌、循環器など心血管・代謝領域の専門医が治療に関与できること、必要な検査を実施できること、常勤の管理栄養士による栄養指導が可能であること、専門医の教育研修施設であることなど、医療機関側にも複数の条件が定められています。
つまり、ウゴービは美容や単なるダイエット目的で使用する薬ではなく、適切に診断されたMASH患者さんに、十分な診療体制のもとで使用する薬です。
東森医院で詳しく評価した結果、MASHの可能性が高い、あるいは肝線維化F2・F3が疑われウゴービを含めた専門的治療を検討した方がよいと判断した場合には、大阪公立大学医学部附属病院をはじめとする大阪府内の肝疾患専門医療機関など、その方の状態や各施設の受け入れ状況を確認したうえで適切にご紹介します。
検査をして「専門病院へ行ってください」で終わるのではなく、専門医療機関での評価・治療後も、地域のかかりつけ医として連携しながら診療を続けていくことを大切にしています。
MASHは「肝臓だけ」を診ていてはいけません
脂肪肝やMASHの患者さんでは、肥満だけでなく、高血圧、2型糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症などを合併していることが少なくありません。
実際、MASLDやMASHは「肝臓だけの病気」というより、全身の代謝異常の一部として捉える必要があります。
特に2型糖尿病や肥満を合併すると、肝線維化が進行するリスクが高くなることが知られています。ウゴービの最適使用推進ガイドラインでも、肝臓の状態だけではなく、体重、血糖、血圧、脂質などの代謝関連指標を継続的に確認することが求められています。
東森医院は消化器内科だけではなく、地域の内科・かかりつけ医として診療を行っています。
そのため、脂肪肝を診断して終わりではなく、高血圧があれば血圧を、糖尿病があれば血糖を、脂質異常症があればコレステロールや中性脂肪を含めて治療していきます。
「肝臓は肝臓の病院、糖尿病は別の病院、血圧はまた別の病院」と分断するのではなく、まず地域のかかりつけ医として全身を診て、専門的な治療が必要な部分については適切な専門医につなぐ。
これが、脂肪肝やMASHの診療では非常に重要だと考えています。
「痩せればいい」だけではありません。でも生活習慣の改善は今も治療の基本です
MASH治療薬が登場したからといって、食事療法や運動療法が不要になったわけではありません。
ウゴービによるMASH治療中も、適切な食事療法・運動療法を継続することが求められています。また、治療中には肝機能や肝線維化だけでなく、体重、血糖、血圧、脂質なども定期的に確認します。
体重を減らすことだけが目的ではありません。
血糖、血圧、脂質、運動習慣、食事内容などを総合的に整えながら、肝臓だけでなく将来の心筋梗塞や脳卒中なども含めた健康リスクを下げていくことが大切です。
大阪市平野区で「脂肪肝」「肝機能異常」を指摘された方へ
「健康診断で脂肪肝と言われた」
「AST・ALT・γ-GTPが高い」
「糖尿病があり、脂肪肝も指摘されている」
「FIB-4 indexを一度調べてみたい」
「腹部エコーで肝臓を調べたい」
「自分がMASHなのか知りたい」
「ウゴービによるMASH治療の対象になるのか知りたい」
このような場合、いきなり大学病院や大きな病院を受診する必要があるとは限りません。
まずは血液検査、FIB-4 index、腹部エコーなど、身近な医療機関でできる検査から始めることができます。
東森医院では、脂肪肝・肝機能異常の一次評価を行い、軽症であれば生活習慣の改善や高血圧・糖尿病・脂質異常症などの治療を続けながら経過をみます。
一方、肝線維化が進んでいる可能性がある場合や、MASHに対する専門的治療が必要と判断した場合には、専門医療機関と連携し、必要な検査・治療につなげます。
脂肪肝を「見つけて終わり」にしない。
そして、すべての方を大病院へ紹介するのでもなく、必要な方を適切なタイミングで専門医につなぐ。
地域のかかりつけ医と専門医療機関が役割分担しながら診療することが、これからの脂肪肝・MASH診療ではますます重要になります。
まとめ
2026年、日本で初めてMASHに対する治療薬としてウゴービが承認され、脂肪肝診療は大きく変わろうとしています。
しかし、一番大切なのは「新しい薬が出たこと」だけではありません。
健康診断などで脂肪肝が見つかった段階で、肝線維化が進んでいないかを確認することです。
東森医院では、FIB-4 indexや腹部エコーを用いて脂肪肝・肝機能異常を評価し、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病も含めて総合的に診療します。
そして、MASHや進行した肝線維化が疑われる場合には、大阪府内の専門医療機関と連携し、ウゴービを含めた適切な治療につなげていきます。
「脂肪肝くらいなら放置しても大丈夫」と考えず、一度ご自身の肝臓がどの程度の状態なのか確認してみることをおすすめします。
参考文献
日本消化器病学会・日本肝臓学会.MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版).
厚生労働省.セマグルチド(遺伝子組換え)製剤の最適使用推進ガイドライン(代謝機能障害関連脂肪肝炎).2026年6月19日.
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA).最適使用推進ガイドライン セマグルチド(遺伝子組換え)〔販売名:ウゴービ皮下注〕.2026年.
Sanyal AJ, et al. Phase 3 Trial of Semaglutide in Metabolic Dysfunction-Associated Steatohepatitis. N Engl J Med. 2025;392:2089-2099.
ノボ ノルディスク ファーマ株式会社.「ウゴービ®皮下注」、代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)に対する承認を取得.2026年6月19日.
記事監修
監修者プロフィール
院長 東森 啓(ひがしもり あきら)
医学博士
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
日本消化器病学会 専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医
日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
日本カプセル内視鏡学会 認定医
日本消化管学会 専門医
日本医師会認定産業医
難病指定医
2008年 山口大学医学部 卒業
2016年 大阪市立大学大学院 医学研究科 博士課程修了
大学病院・基幹病院で消化器内科・消化器内視鏡診療に従事
現在 東森医院 院長