2026年8月23日

刺身や寿司、しめ鯖、イカなどの魚介類を食べた数時間後に、突然「みぞおちが激しく痛い」「吐き気がする」といった症状が出た場合、アニサキス症の可能性があります。
アニサキスは魚介類に寄生する線虫の一種で、生きた幼虫を生、または加熱・冷凍が不十分な状態で食べることで発症します。特に多いのが、アニサキスが胃の粘膜に入り込む「胃アニサキス症」です。
胃アニサキス症では、胃カメラでアニサキスを見つけ、その場で鉗子を使って取り除くことが最も確立した治療です。虫体を摘出すると、それまで続いていた激しい腹痛が比較的速やかに改善することがあります。
東森医院では、大阪市平野区で「刺身を食べてから急に胃が痛くなった」「アニサキスかもしれない」といった症状に対して、当日の診療・検査状況を確認しながら、可能な限り緊急・当日の胃カメラにも対応しています。

1.アニサキスとは?症状は食べてから何時間後に出る?
アニサキス幼虫は白い糸のような寄生虫で、長さはおよそ2~3cmです。サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、ヒラメ、イカなど、私たちが日常的に食べているさまざまな魚介類に寄生しています。
魚介類が死亡して時間が経つと、内臓に寄生していたアニサキス幼虫が筋肉へ移動することがあります。そのため、刺身や寿司など魚介類を生で食べる機会の多い日本では、アニサキスによる食中毒は決して珍しいものではありません。
「アニサキスの症状は食べてから何時間後に出ますか?」という質問をよくいただきます。厚生労働省によると、急性胃アニサキス症では、魚介類を食べてから12時間以内に、激しいみぞおちの痛み、吐き気、嘔吐などが出現することが典型的です。実際には、食後数時間で突然強い胃痛が出て受診される方が多くみられます。
痛みはずっと同じ強さで続くとは限らず、強くなったり少し軽くなったりを繰り返すこともあります。これは、アニサキスが単純に胃の壁に刺さることだけでなく、虫体に対する局所の強い炎症反応やアレルギー反応が症状に関係しているためと考えられています。胃カメラで観察すると、アニサキスが入り込んでいる周囲の胃粘膜が赤くなり、大きく腫れていることがあります。
一方、アニサキスが胃を通過して小腸まで到達する「腸アニサキス症」では、食後十数時間から数日後に、強い下腹部痛、吐き気、嘔吐などが現れることがあります。多くは保存的に改善しますが、腸閉塞や腹膜炎などを来し、入院治療や外科的治療が必要になることもあります。
また、アニサキスでは消化器症状だけでなく、じんましんなどのアレルギー症状を起こすこともあります。息苦しさ、全身のじんましん、血圧低下、意識が遠のくなどの症状を伴う場合はアナフィラキシーの可能性があり、胃カメラよりもまず救急処置が優先されます。
2.アニサキスは放置しても大丈夫?刺身を食べた後の強い胃痛は早めに受診を
「アニサキスは放置していればそのうち死ぬので、病院に行かなくても大丈夫ですか?」という質問も少なくありません。
確かに、アニサキスは人間を本来の宿主としている寄生虫ではなく、人体の中で長期間生き続けるわけではありません。しかし、強い腹痛があるにもかかわらず「どうせアニサキスだから」と自己判断して何日も我慢することはおすすめできません。
その理由の一つは、胃の中にアニサキスがいるのであれば、胃カメラで虫体を取り除くことで早期に症状を改善できる可能性があるからです。
もう一つ重要なのは、刺身を食べた後の腹痛がすべてアニサキスとは限らないことです。胃・十二指腸潰瘍、胆石症、胆のう炎、急性膵炎、虫垂炎、腸閉塞などでも強い腹痛が起こります。なかには緊急の治療が必要な病気もあります。
特に、「数時間前に刺身、寿司、しめ鯖、イカなどの生ものを食べた」「その後突然みぞおちに強い痛みが出た」「吐き気や嘔吐もある」という場合は、胃アニサキス症を疑う重要な手掛かりになります。
医療機関を受診する際には、「何を食べたか」「何時ごろ食べたか」「何時ごろから痛みが始まったか」を伝えていただくと診断の助けになります。
アニサキスを疑って当日の胃カメラを行う可能性がある場合には、受診まで食事を控えていただくことが大切です。胃の中に食べ物が多く残っていると、食物残渣の間や胃のひだに隠れている細いアニサキスを発見しにくくなるためです。また、胃内容物が多い状態での胃カメラは、嘔吐や誤嚥の危険にもつながります。
ただし、水分摂取や普段服用している薬については、糖尿病などの基礎疾患や服薬内容によって対応が異なりますので、受診する医療機関へご確認ください。
3.アニサキスの検査・治療は胃カメラが中心。当院では緊急内視鏡にも対応しています
胃アニサキス症が疑われる場合、診断と治療の中心となるのが上部消化管内視鏡検査、いわゆる胃カメラです。
胃カメラで胃の中を観察すると、白い糸状のアニサキスが胃粘膜に頭部を入り込ませている様子が確認できることがあります。その周囲の粘膜は赤く腫れ、ときにはびらんや出血を伴います。
アニサキスは必ずしも1匹だけとは限りません。複数の虫体が同時に胃の中に存在することもあります。そのため、1匹を見つけて摘出した後も、ほかに虫体が残っていないか胃全体を丁寧に確認することが重要です。
アニサキスを確認できれば、胃カメラの先端から鉗子という器具を出し、胃粘膜に入り込んでいる部分の近くをつかんで虫体を摘出します。胃アニサキス症では、この内視鏡的摘出が最も確立した治療です。原因となっている虫体を取り除くと、激しい痛みが比較的速やかに軽くなることがあります。
現在のところ、アニサキスそのものを確実に駆除する内服薬は確立していません。そのため、「アニサキスに効く市販薬を飲めば治る」というものではありません。強い胃痛があり、食事歴から胃アニサキス症が疑われる場合には、早めに胃カメラが可能な医療機関へ相談することが大切です。
東森医院では、大阪市平野区で「アニサキスかもしれない」「刺身を食べて数時間後から激しい胃痛がある」という患者さんに対して、診療・内視鏡検査の状況を調整しながら、可能な限り当日の緊急胃カメラに対応しています。
また、アニサキスを摘出した直後に、胃粘膜の腫れや炎症、アレルギー反応がすべて消失するわけではありません。当院では虫体を摘出して終了ではなく、その後の腹痛、吐き気、胃粘膜の腫れ、じんましんなどの症状も確認します。症状や状態に応じて、胃薬に加え、抗ヒスタミン薬やステロイドなど、炎症・アレルギー反応を抑える治療を検討することもあります。
ただし、ステロイドや抗ヒスタミン薬はアニサキスそのものを殺す薬ではありません。急性胃アニサキス症の基本治療はあくまで内視鏡による虫体摘出であり、薬物療法は症状やアレルギー反応に応じた補助的治療と考えます。ステロイドや抗ヒスタミン薬については腸アニサキス症などで有効だったとの報告がありますが、内視鏡的摘出ほど治療法が確立しているわけではないため、患者さんの状態をみながら個別に判断します。
一方、アニサキスが小腸まで移動した腸アニサキス症では、通常の胃カメラで虫体を取り除くことは困難です。腹部CTや腹部エコーなどで腸管の腫れや腹水、腸閉塞の有無を確認し、点滴や鎮痛などの保存的治療を行います。腸閉塞や腹膜炎などが疑われる場合は、高次医療機関での入院治療や外科的治療が必要になることがあります。
4.アニサキスは何の魚に多い?冷凍・加熱で予防できる?
「アニサキスは何の魚に多いですか?」という質問も多くあります。
アニサキスはサバだけの問題ではありません。サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、ヒラメ、イカなど、さまざまな魚介類に寄生する可能性があります。そのため、「青魚だけ注意すればよい」「イカだけ気をつければよい」というものではありません。
アニサキスを予防するうえで重要なのは、魚介類の鮮度、目視による確認、そして適切な冷凍または加熱です。
魚を丸ごと購入した場合には、できるだけ新鮮なうちに内臓を取り除くことが大切です。アニサキスは魚の内臓に多く存在し、魚が死亡した後に内臓から筋肉部分へ移動することがあるためです。調理するときには、明るい場所で魚の身をよく確認し、白い糸状の虫体が見つかった場合には取り除きます。
ただし、目視だけですべてのアニサキスを発見できるわけではありません。確実性の高い予防方法は冷凍または加熱です。
厚生労働省では、アニサキス対策として「マイナス20℃で24時間以上の冷凍」、または「70℃以上での加熱、あるいは60℃で1分間の加熱」を示しています。
一方、「しめ鯖なら酢で締めているから大丈夫」と考えている方もおられますが、一般的な料理で使用する程度の酢ではアニサキスは死滅しません。同様に、塩漬け、しょうゆ、わさびでも死滅しません。
つまり、「酢で締めれば大丈夫」「わさびをたくさんつければアニサキス予防になる」という考えは正しくありません。特に家庭で釣った魚などを生食する場合には、鮮度管理だけに頼らず、適切な冷凍・加熱を行うことが重要です。
5.アニサキスかも?と思ったら我慢せずご相談ください
アニサキスについて、「市販薬で治りますか?」「何日で治りますか?」「放置しても大丈夫ですか?」「胃カメラは必要ですか?」といった質問をよくいただきます。
まず、アニサキスそのものを確実に駆除できる市販薬は現在確立していません。胃薬や鎮痛薬で一時的に症状が軽くなることはありますが、胃アニサキス症であれば、胃カメラで虫体を確認し、摘出することが最も確立した治療です。
また、アニサキスは人間の体内で永久に生存するわけではありませんが、「いずれ死ぬから」と激しい腹痛を何日も我慢する必要はありません。胃に虫体がいる間は強い炎症反応が続くことがありますし、そもそも腹痛の原因がアニサキスではない可能性もあります。
胃カメラを行えば必ずアニサキスが見つかるというわけでもありません。胃の中に食べ物が多く残っている場合、胃のひだの間に隠れている場合、すでに小腸へ移動している場合などには、胃カメラを行っても虫体を確認できないことがあります。そのような場合には、症状や食事歴を確認し、必要に応じて血液検査、腹部エコー、CTなどを組み合わせて診断します。
「刺身や寿司を食べた数時間後から急にみぞおちが痛くなった」「夜から激しい胃痛が続いている」「アニサキスかもしれないので今日胃カメラを受けたい」という場合には、できるだけ早めに医療機関へご相談ください。
特に、我慢できないほどの腹痛、繰り返す嘔吐、強い腹部膨満、発熱、全身のじんましん、息苦しさ、意識が遠のくような症状がある場合には、速やかな医療機関の受診が必要です。呼吸困難や意識障害などアナフィラキシーを疑う症状がある場合には、救急対応が優先されます。
アニサキス症は、生魚を食べたという食事歴から疑うことができ、胃の中に虫体がいる場合には、胃カメラで診断と治療を同時に行うことができる病気です。
東森医院では、消化器内視鏡専門医・指導医である院長が胃カメラを担当しています。「刺身を食べた後から急に胃が痛い」「アニサキスの可能性がある」「大阪市平野区で当日の胃カメラができる医療機関を探している」といった場合にはご相談ください。診療・検査状況を確認したうえで、可能な限り速やかに対応いたします。
参考文献・参考資料
参考文献1:厚生労働省「アニサキスによる食中毒を予防しましょう」
参考文献2:厚生労働省「アニサキス食中毒に関するQ&A」
参考文献3:厚生労働省「食中毒予防:アニサキスによる食中毒を予防しましょう!」
参考文献4:Akasaka Y, Kizu M, Aoike A, Kawai K. Endoscopic management of acute gastric anisakiasis. Endoscopy. 1979;11:158-162.
参考文献5:Sugimachi K, Inokuchi K, Ooiwa T, et al. Acute gastric anisakiasis. Analysis of 178 cases. JAMA. 1985;253:1012-1013.
参考文献6:Kakizoe S, Kakizoe H, Kakizoe K, et al. Endoscopic findings and clinical manifestation of gastric anisakiasis. Am J Gastroenterol. 1995;90:761-763.
参考文献7:Shimamura Y, Muwanwella N, Chandran S, et al. Common Symptoms from an Uncommon Infection: Gastrointestinal Anisakiasis. Can J Gastroenterol Hepatol. 2016;2016:5176502.
参考文献8:Toyoda H, Tanaka K. Intestinal Anisakiasis Treated Successfully with Prednisolone and Olopatadine Hydrochloride. Case Rep Gastroenterol. 2016;10:30-35.
参考文献9:Nonković D, Tešić V, Šimat V, et al. Anisakidae and Anisakidosis: A Public Health Perspective. Pathogens. 2025;14:217.
記事監修
監修者プロフィール
院長 東森 啓(ひがしもり あきら)
資格・所属学会
医学博士
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
日本消化器病学会 専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医
日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
日本カプセル内視鏡学会 認定医
日本消化管学会 専門医
日本医師会認定産業医
難病指定医
略歴・主な職歴
2008年 山口大学医学部 卒業
2016年 大阪市立大学大学院 医学研究科 博士課程修了
大阪公立大学医学部附属病院などで消化器内科・消化器内視鏡診療に従事
現在 東森医院 院長