2026年6月08日

1.大腸カメラは「ただ受ける」だけでなく、質が大切です
大腸内視鏡検査、いわゆる大腸カメラは、大腸がんや大腸ポリープを早期に発見するための大切な検査です。
しかし、大腸カメラは「検査を受ければそれで十分」というものではありません。
大切なのは、小さなポリープや早期がんのサインを、どれだけ丁寧に見つけられるかです。
大腸がんの多くは、腺腫と呼ばれる大腸ポリープから発生すると考えられています。そのため、大腸カメラでは、将来的にがんになる可能性のあるポリープを早い段階で見つけ、必要に応じて切除することが重要です。
この「検査の質」を示す代表的な指標の一つが、腺腫発見率です。

2.腺腫発見率とは?
腺腫発見率は、英語で Adenoma Detection Rate:ADR と呼ばれます。
これは、大腸内視鏡検査を受けた方のうち、腺腫が1つ以上見つかった患者さんの割合を示す指標です。
たとえば、100人の患者さんに大腸カメラを行い、そのうち40人に腺腫が見つかった場合、腺腫発見率は40%となります。
腺腫発見率が高いということは、単に「ポリープが多い患者さんを診ている」という意味だけではありません。もちろん患者さんの年齢や背景にも影響されますが、一般的には、内視鏡医が丁寧に観察し、病変をしっかり見つけているかを示す重要な指標とされています。
実際に、腺腫発見率は大腸内視鏡検査の質を示す代表的な指標とされており、2024年に更新されたASGE/ACGの大腸内視鏡検査の質指標では、腺腫発見率の目標値が35%以上とされています。
3.院長の腺腫発見率
当院院長の東森啓は、これまで大腸内視鏡検査の前処置方法や検査の質に関する研究に取り組んできました。
その一つである APPLE trial (https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39996602/)は、大腸内視鏡検査の前処置方法について検討した日本国内の多施設共同ランダム化比較試験です。この研究では、1LのPEG-Ascにリナクロチドを併用する方法と、センナを併用する方法が比較されました。APPLE trialでは、リナクロチドを併用した方法が、センナ併用法と比較して良好な腸管洗浄効果を示したことが報告されています。
このAPPLE trialのサブグループ解析において、院長の腺腫発見率は約50%でした。
これは、現在の大腸内視鏡検査の質指標で求められる35%以上という基準をしっかり上回る結果です。
さらに、この50%という結果は、初めて大腸カメラを受ける方だけを対象にしたものではありません。過去に大腸カメラを受けたことがあり、すでにポリープを切除されている方も含まれています。
繰り返し検査を受けている患者さんでは、過去の検査でポリープが切除されているため、新たな腺腫が見つかりにくい場合もあります。そのような患者さんが多く含まれる中で、腺腫発見率45%であったことは、丁寧な観察を続けることの重要性を示す結果と考えています。

4.腺腫を見つけるために大切なこと
腺腫をしっかり見つけるためには、医師の経験だけでなく、いくつかの要素が関係します。
まず大切なのは、腸の中がきれいに見える状態であることです。便や濁った液体が残っていると、小さな病変が隠れてしまうことがあります。そのため、大腸カメラでは前処置がとても重要になります。
次に大切なのは、観察時間と観察の丁寧さです。大腸のひだの裏側、曲がり角、平坦な病変などは、急いで観察すると見逃されることがあります。大腸カメラでは、ただ奥まで到達するだけでなく、カメラを抜きながら粘膜を丁寧に観察することが重要です。
また、内視鏡機器の性能も関係します。当院では、最新の内視鏡を用いて、拡大観察や特殊光観察などを活用し、ポリープや早期がんの発見につながるよう努めています。
つまり、腺腫発見率は、
前処置の質、内視鏡機器、医師の観察技術、検査への姿勢
が組み合わさって反映される指標といえます。

当院が大切にしていること
当院では、大腸カメラを「苦しくない検査」にするだけでなく、しっかり病変を見つける検査にすることを大切にしています。
鎮静剤を使用して、できるだけ楽に受けていただくこと。
前処置の負担をできるだけ減らすこと。
そして、腸の中を丁寧に観察し、必要な病変を見逃さないこと。
これらは、すべて大腸がんの早期発見と予防につながります。
大腸カメラに不安を感じる方は少なくありません。
しかし、検査の目的は「つらい思いをすること」ではなく、大腸がんを早く見つけること、そして予防することです。
当院では、患者さん一人ひとりに合わせて、できるだけ負担が少なく、かつ質の高い大腸内視鏡検査を提供できるよう努めてまいります。
参考文献
1.Rex DK, Schoenfeld PS, Cohen J, et al. Quality indicators for colonoscopy. Gastrointestinal Endoscopy. 2024.
2.ASGE/ACG. Quality Indicators for Colonoscopy: 2024 update / Implementation Tips. 2024.
3.Maeda N, Higashimori A, Kabata D, et al. Efficacy of 1 L Polyethylene Glycol Plus Ascorbic Acid With Linaclotide Versus Senna for Bowel Preparation: A Multicenter, Endoscopist-Blinded, Randomized Controlled Trial(APPLE trial). American Journal of Gastroenterology. 2025.
4.Higashimori A, et al. Does linaclotide have high tolerability with early onset of defecation compared with senna? A post hoc analysis of the APPLE trial. Gut. 2024;73(Suppl 2):A380.
5.大阪公立大学.より効果的で負担の少ない新たな大腸内視鏡前処置法を検証. 2025.https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-17015.html
記事監修
監修者プロフィール
院長 東森 啓(ひがしもり あきら)
資格・所属学会
医学博士
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
日本消化器病学会 専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医
日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
日本カプセル内視鏡学会 認定医
日本消化管学会 専門医
日本医師会認定産業医
難病指定医
略歴・主な職歴
2008年 山口大学医学部 卒業
2016年 大阪市立大学大学院 医学研究科 博士課程修了
大阪公立大学 医学部 病院講師
香港中文大学 Prince of Wales Hospital 客員研究員
なにわ生野病院 副部長
ガイドライン作成・システマティックレビュー
H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024年改訂版 システマティックレビュー担当
薬剤性消化管障害ガイドライン 作成委員
消化性潰瘍診療ガイドライン システマティックレビュー担当
この度、東森医院の4代目として、大阪市平野区にて診療を行っております。大学病院・地域中核病院・海外の医療現場で培った幅広い内科・消化器診療、内視鏡診療、研究の経験を活かし、地域の皆さまに信頼していただける医療を提供してまいります。
当院では、最新の内視鏡システムと鎮静を用いた「苦痛の少ない胃カメラ・大腸カメラ」に力を入れております。また、日帰り大腸ポリープ切除術にも対応し、検査から治療まで一貫した内視鏡診療を提供しています。生活習慣病や一般内科診療にも対応し、病気の早期発見と予防医療を通じて、地域の皆さまの健康を支える“かかりつけ医”を目指してまいります。