2026年5月31日

大腸内視鏡検査は「大腸がんを早く見つける」ための大切な検査です
大腸内視鏡検査、いわゆる「大腸カメラ」は、大腸がんや大腸ポリープを早期に発見するためにとても重要な検査です。大腸がんは早期の段階では自覚症状が出にくいことが多く、症状が出てから見つかる頃には進行している場合もあります。そのため、症状がないうちに検査を受け、早い段階で病変を見つけることが大切です。
また、大腸ポリープの中には、将来的にがんへ進展する可能性があるものがあります。小さなポリープの段階で発見し、必要に応じて切除することで、大腸がんの予防につながる可能性があります。大腸内視鏡検査は、病気を「見つける」だけでなく、「予防する」役割も持った検査といえます。
腸の中が汚れていると、小さな病変を見逃す可能性があります
大腸内視鏡検査では、内視鏡カメラで大腸の粘膜を直接観察します。しかし、腸の中に便や濁った液体が残っていると、粘膜の表面が見えにくくなります。
たとえば、暗い部屋で小さなものを探すとき、床に物が散らかっていると見つけにくいように、大腸の中に便や濁った液体が残っていると、小さなポリープや平坦な病変、早期がんを見つけにくくなってしまいます。
実際に、前処置が不十分な場合には、腺腫と呼ばれる前がん病変の見逃しが増えることが報告されています。過去の研究では、前処置が不十分だった大腸内視鏡検査のあとに再検査を行うと、見逃されていた腺腫が一定の割合で見つかることが示されています。
そのため、大腸内視鏡検査の精度を高めるためには、最新の内視鏡機器や医師の技術だけでなく、検査前に腸の中をしっかりきれいにしておくことが欠かせません。

前処置が不十分だと、検査時間や再検査にも影響します
大腸内視鏡検査の前に行う、腸の中をきれいにする準備のことを「前処置」といいます。一般的には、検査前日から食事内容を調整し、検査前に腸管洗浄剤と呼ばれる下剤を服用します。
前処置が不十分な場合、次のような問題が起こる可能性があります。
ポリープや早期がんを見逃す可能性が高くなる
観察に時間がかかり、検査時間が長くなる
患者さんの身体的負担が増える
十分な観察ができず、再検査が必要になることがある
欧米のガイドラインでも、良好な腸管洗浄は質の高い大腸内視鏡検査に不可欠であり、前処置が不十分な場合には早期の再検査が必要になることがあるとされています。
つまり、前処置は単に「検査前に下剤を飲む作業」ではありません。大腸内視鏡検査を正確に、安全に、そしてスムーズに行うための大切な工程なのです。
「きれい」と「負担の少なさ」を両立する前処置へ
理論的には、たくさんの腸管洗浄剤を飲めば、腸の中がきれいになる可能性は高くなります。しかし、量が多すぎたり、味が合わなかったり、服用に時間がかかったりすると、患者さんにとって前処置そのものが大きな負担になります。
実際に、「大腸カメラは検査よりも下剤がつらかった」と感じる方は少なくありません。前処置がつらい経験になると、「次回はできれば受けたくない」と思ってしまうこともあります。しかし、大腸がんは早期には症状が出にくいため、定期的な検査や適切なタイミングでの再検査がとても重要です。
そのため、これからの大腸内視鏡検査では、単に腸をきれいにするだけでなく、患者さんが無理なく受けられる前処置を考えることが大切です。洗浄効果を保ちながら、できるだけ飲みやすく、負担の少ない方法を選ぶことが、検査の質を高めるだけでなく、次回の検査につながる安心感にもつながります。
私はこれまで、高い洗浄効果と高い忍容性、つまり「しっかりきれいになること」と「患者さんがつらくなりにくいこと」を両立する前処置方法について研究を行ってきました。大腸内視鏡検査をより安心して受けていただくためには、患者さん一人ひとりの便通、年齢、基礎疾患、生活環境などに合わせた前処置を考えることが重要です。
今回からの一連のコラムでは、大腸内視鏡検査の前処置について、できるだけわかりやすく解説していきます。
「なぜ下剤が必要なのか」「どのような前処置方法があるのか」「つらさを減らす工夫には何があるのか」など、患者さんが安心して検査を受けられるよう、少しずつお伝えしていきたいと思います。

参考文献
国立がん研究センター がん情報サービス.大腸がん検診について.
Hassan C, et al. Bowel preparation for colonoscopy: European Society of Gastrointestinal Endoscopy ESGE Guideline – Update 2019. Endoscopy. 2019.
Johnson DA, et al. Optimizing adequacy of bowel cleansing for colonoscopy: recommendations from the US Multi-Society Task Force on Colorectal Cancer. Gastroenterology / Gastrointestinal Endoscopy. 2014.
Jacobson BC, et al. Optimizing Bowel Preparation Quality for Colonoscopy: Consensus Recommendations by the US Multi-Society Task Force on Colorectal Cancer. Gastroenterology / Gastrointestinal Endoscopy. 2025.
Lebwohl B, et al. The impact of suboptimal bowel preparation on adenoma miss rates and the factors associated with early repeat colonoscopy. Gastrointestinal Endoscopy. 2011.
Chokshi RV, et al. Prevalence of missed adenomas in patients with inadequate bowel preparation on screening colonoscopy. Gastrointestinal Endoscopy. 2012.
Sulz MC, et al. Meta-Analysis of the Effect of Bowel Preparation on Adenoma Detection. American Journal of Gastroenterology. 2016.
記事監修
監修者プロフィール
院長 東森 啓(ひがしもり あきら)
資格・所属学会
医学博士
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
日本消化器病学会 専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医
日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医
日本カプセル内視鏡学会 認定医
日本消化管学会 専門医
日本医師会認定産業医
難病指定医
略歴・主な職歴
2008年 山口大学医学部 卒業
2016年 大阪市立大学大学院 医学研究科 博士課程修了
大阪公立大学 医学部 病院講師
香港中文大学 Prince of Wales Hospital 客員研究員
なにわ生野病院 副部長
ガイドライン作成・システマティックレビュー
H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024年改訂版 システマティックレビュー担当
薬剤性消化管障害ガイドライン 作成委員
消化性潰瘍診療ガイドライン システマティックレビュー担当
この度、東森医院の4代目として、大阪市平野区にて診療を行っております。大学病院・地域中核病院・海外の医療現場で培った幅広い内科・消化器診療、内視鏡診療、研究の経験を活かし、地域の皆さまに信頼していただける医療を提供してまいります。
当院では、最新の内視鏡システムと鎮静を用いた「苦痛の少ない胃カメラ・大腸カメラ」に力を入れております。また、日帰り大腸ポリープ切除術にも対応し、検査から治療まで一貫した内視鏡診療を提供しています。生活習慣病や一般内科診療にも対応し、病気の早期発見と予防医療を通じて、地域の皆さまの健康を支える“かかりつけ医”を目指してまいります。